月で逢おうよ 71

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 幸也の方はそんな勝浩の潤んだ瞳にさらにガツンと心臓に衝撃を受けた。
「信じてくれよ、お前だけだから」
 幸也は勝浩の手をとって今度は優しく口づける。そして勝浩の項に手を回すと静かに引き寄せ、今度は今まで誰に対してもそこまで細心に接したことがないくらいゆっくりと口づけた。
 勝浩にとってはキス一つでさえ生まれて初めてなのに、心ごと身体中の力が奪われていくような感覚に全神経がショートして、頭の中は真っ白になり、ようやく幸也が離れた時も放心したように幸也を見つめるばかりだった。
「ごめん、勝浩、俺もう限界…」
 幸也は勝浩のTシャツやらスウェットやらをガシガシと脱がしていく。
飲み会で久しぶりに勝浩を見て、すぐにも抱きしめたくて、どんなに勝浩に飢えているか思い知らされた。
 だから何とかもっと勝浩に近づきたくて、検見崎が仕事で施設訪問会に行けなくなりそうだと聞いた時、居ても立っても居られずに自分が代わりに行くと言い出して、お前、いったいどうしたんだと、あの時は呆れられたのだ。
 だが今こうして勝浩は自分の腕の中にいる。
「あ、ちょ、待って……」
 再び幸也に抱き込まれた勝浩は俄かに後退ろうとする。どうにでもなれとは思っていても、身体はやはり抵抗してしまう。
「ダァメ、待てない!」
「だって、俺、誰ともやったことないんですからっ!」
 そんなことを口にする勝浩に幸也は今まで積もりに積もった思いが溢れて止まらなくなる。
「俺が好きだったんなら、当然だろ」
 まさかと思っていたが、頑固で固い勝浩なら好きな相手じゃなければやったりしないだろうし、会わなかった間にもそんな相手がいなかったのだろうと思うと、幸也は余計に勝浩のことがかわいくて仕方がない。


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